コラム

広島市土石流災害の悲劇!

地質時代 第3号 2014年9月 一面  

 8月20日に発生した、広島市の土砂災害は、死者72名、行方不明者2名(8月29日現在)という悲劇をもたらしました。 国土交通省の調べでは、全国に土砂災害の危険個所に指定されているのは525,307個所にものぼるとのこと。今回被災した地区は警戒区域どころか危険個所の指定もなかった。行政は危険性を認識しつつも、対策工事を行う義務の発生に逡巡があったようだ。また、警戒個所としてハザードマップにのれば、不動産価格に影響があることもあり、住民説明での確認も必要になってくる。安全安心よりも経済を優先するこのような経済的背景が、被害を大きくした原因ではなかったのか?

 上2枚の写真は、グーグルストリートヴューで見た安佐南区八木3丁目付近の土石流前の町並み。奥の山並みが不気味に住宅地を睥睨しているが、日本のどこにでもありそうな雰囲気。もう一枚は、なんと住宅新築中の工事現場。被災の有無は分らないが、丘陵地の危険地域であることはまちがいない。

 中の写真は、八木3丁目の被災状況。原形がまったくわからない。時速40kmで数千~十万トンの土砂と水と材木と岩石が襲い掛かってきた。 

 

 

 

 

 

下の写真は、安佐南区の八木地区と緑井地区の空中写真。阿武山に裾野から這い登るように宅地開発が進んでいることがわかる。土肌が出ているところが今回、土砂崩れを起こした個所。こうして、高い視点でみると如何に危険であったのか、いや、現在も危険であることに戦慄を覚える。 われわれ地質調査業者の責任は、このような高い視点で危険を喚起し続けることかもしれない。 ご冥福をお祈りいたします。