コラム

浮き上がる!?上野駅と東京駅

平成29年5月6日発行 地質時代2面

江東区、墨田区、江戸川区の観測井の地下水変動図

 

 上のグラフは弊社が東京都土木技術・人材支援センターより受注し、平成28年1月から平成28年12月測定した業務の一年前の地下水位の変位データです。これによると、下町地区で昭和38年から47年に最大T.P.-58mだったのが平成27年にはT.P.-5m程度まで約43m近く地下水が上昇(回復)しています。

  東京都では、昭和28年から毎年継続して地下水や地盤沈下を測定していますが、このような地下水の回復は、地盤沈下を収束させており地下水の取水規制の大きな成果といえます。 地下水上昇で浮き上がる駅舎を守る ① 新幹線の上野地下駅は地下4階建てで、地下30mの東京礫層を基礎としています。地下水位は設計時の昭和54年(1979年)には地下38mと基礎下8mにありましたが、平成6年(1994年)には地下14mまで上昇、さらに11.5mまでになり、専門家の計算では、なんと駅舎そのものが浮き上がることが明らかになりました。その対策が3万トンの鉄の錘を地下4階のホーム下に積み上げて並べました。2tの直方体の鉄の塊を15000個並べたとのことです。地下水の長期にわたる地道な測定が着工前に対策を立てられた大きな要因のように思います。

 ② 総武快速線の東京地下駅は地下5階建てで、地下27mで江戸川砂層の上に直接基礎で作られました。建設時の昭和47年(1972年)の地下水位は地下35mでしたが、平成10年(1998年)には地下15mと20mも上昇しました。このままあと1m上昇すると床の損傷が起き、あと2.5m上昇すると地下駅全体が浮き上がると予想されました。対策として上野駅のような錘方式が検討されましたが、地下水圧のもとでも施行できる新たに改良されたアンカーが費用と機能で優れていると判断されアンカー方式が採用されました。基礎と支持地盤とを接合し、1本のアンカーで100tの水圧に耐えられるものを130本うち、費用は上野駅の三分の一で済んだとのこと。水圧を受けながら掘削する技術革新が経費削減につながったようです。