コラム

歴史を変えた大噴火

2018年1月15日発行 地質時代第16号 1面

 

 23日に噴火した群馬・長野県境の草津白根山の火口は、従来警戒を強めていた「湯釜」ではなく、気象庁が3000年間も噴火していないと見ていた2キロ南の「鏡池」付近だった。火山活動の事前の現象もなく、まさに寝耳に水の災害。自衛隊員一名が亡くなられたが、他の隊員を庇って噴石に当たったようです。ご冥福をお祈りすると同時に献身的な行動に敬意を表します。  

 火山噴火は大きな災害です。噴火によって歴史が変わった事実を調べてみました。

1.7万4千年前 インドネシア北スマトラ州 トバカルデラの世界最大級の大噴火 

 インド、パキスタン、中国にも火山灰が降り注いだ。グリーンランドの氷床コアからも検出。 寒冷化は6000年続き、ヴュルム氷期に突入した。この噴火と同時期に、ヒトDNAの多様性が著しく減少する「ボトルネック(遺伝子多様性減少)」が見られることから、この噴火で当時の人類の大半が死滅したという『トバ・カタストロフ理論』が生まれた。

 

 

2.紀元前1628年 ギリシャ エーゲ海キクラデス諸島南部サントリーニ島 海底火山の爆発的噴火(ミノア噴火)によって30m級の津波によってクレタ島で栄えたミノア文明が打撃を受け衰退の原因となった説がある。また、寒冷化によって中国の夏王朝滅亡の要因説もある。プラトンのアトランティス伝説のモデルとなった。

 

 

 

3.紀元79年 イタリア ヴェスヴィオ火山 麓の都市ポンペイ(人口2万人)が厚さ7mの軽石に埋没した。

 

 

 

 

4.紀元535年 クラカタウ(インドネシア) この巨大噴火による気候変動が、東ローマ帝国の衰退、ペストの蔓延、ゲルマン民族の大移動、マヤ文明の崩壊の発端となったとBBCのドキュメンタリーで放映された。

 

 

 

5.紀元1783年 ラキ火山(アイスランド) 噴火によって1億2千万トンの有毒な二酸化硫黄を含んだ火山灰がヨーロッパやアメリカ大陸を覆った。翌年には寒波が押し寄せフランスの植民地であったアメリカ南部が凍りついた。食料不足が深刻化し、フランス革命の原動力になったと言われている。